山村聚落の自然法
杉本 壽 著
発行年不詳(昭和27年ごろか)『みどり』別冊(第五巻三号)
1,000円  A5判(148×210ミリ)/38頁 2段組
現在の福井県大野郡・岐阜県郡上市域にあたる上穴馬(かみあなま)村・下穴馬村・五箇村(下打波村)・西谷村などの白山山彙・山村における山民の採取経済を研究した戦後の論文。 「山野の米」と俗称されていたトチの実を産する林を対象に、近世以前から自然法的な不文律「山定」が制度化されてきた。 これが文書形式になったのは明治38(1905)年の寄合においてで、その8ヶ条を逐条的に解説する。 著者は、敗戦後の食糧不足の経験が、原始/文化が紙一重であるような山民の習俗への関心を導いたと述べている。
我國思想犯人の環境素質等より見たる犯罪原因
長谷川信(札幌地裁検事)著
司法研究(発行年記載なし)抜刷
2,500円  A5判(148×210ミリ)/116頁
「思想犯人」とは共産主義者のことであると著者は限定している。 共産主義運動は「犯罪」であり、その原因は「環境・素質」に求められることを統計的に証明するため、2,000人を調査したと報告している。 付録として挙げられた個別対象者は佐野学・鍋山貞親・三田村四郎・徳田球一・國領伍一郎・田中清玄・風間丈吉ら9名。それらの家庭環境・学校程度・経歴・個人的動機などを抽出して重視し、共産主義撲滅を期そうとしている。 客観性を装いつつも、確信的な思想検事の筆といえる。「司法研究」に掲載されたもので、記載はないが昭和8年(1933)以降の発行と推測しうる。
同志社ローマンス
松浦政泰 著
1918(大正7)年
3,500円  四六判(128×188ミリ)/420頁
仏教各宗の総本山が集中し王城の都であった京都に、明治8年(1875)に設立された同志社英学校。 その創成期を回顧する同志社大学の裏面史。設立者である新島襄・八重夫妻、最初期に学んだ海老名弾正・横井時雄・小崎弘道・徳富蘇峰・金森通倫らの熊本バンドの学生たち、デイビス・ラーネッド・ゴルドンら外国人教師陣。 新島襄没年(明治23年)ごろまでの草創期の女学校・男学校の様子や、キリスト教主義・英語教育の理念と実態が赤裸々にえがかれ、明治教育史としても正史にない精彩に富んでいる。 序文・徳富蘇峰。人物索引付き。定価1円20銭。
改造世界 大正九年二月號
伊藤茂雄 編
1920(大正9)年/改造世界社 発行
2,000円  A5判(148×210ミリ)/120頁
巻頭言・堺利彦。大正デモクラシー下の論壇誌であった「潮」を「改造世界」と改題して刊行。 折から民政党・政友会の二大政党支配の行き詰まりにより制限選挙が批判され、普通選挙への期待が高まる。その帝国議会への弾劾に誌面の多くを割いている。 また、森戸辰男筆禍休職問題についても特集し、高畠素之・布施辰治・奥むめお・生田長江・堺利彦・小川未明・与謝野晶子・沖野岩三郎・伊藤野枝・神近市子らの感想を掲載。 森戸は無政府主義者・クロポトキンの研究を発表したことで筆禍に遭った。定価30銭。
神戸に於ける三菱勞働紛議
伊藤豐一 著
1921(大正10)年/三菱造船(株)・三菱内燃機製造(株)・三菱電機(株)編
3,500円  A5判(148 × 210ミリ)/90頁
大正9年に三菱造船神戸工場で起こった労働争議は、三菱全社に波及し長期化する。翌年、その全貌を会社側が報告した冊子。 労働者側は示威行動から怠業(ストライキ)突入へと行動を展開し、三菱側は工場閉鎖、三次にわたる休業を断行する。 警官隊との衝突、流血、検束、処分、解雇、復業にまでわたった全過程の、告示・声明・檄文・市長調停・声明等から投書やおみくじに至るまでを収録している。 この争議は、川崎造船所のそれとともに当時の時事問題となり、大正デモクラシー下の労働争議激発を一挙にもたらすことになった。非売品。
齋藤代議士議政壇上の名演説
鬼外三木麟 編
1936(昭和11)年/通俗政談研究會 発行
1.500円  四六判(128×188ミリ)/48頁
官報速記録による、第69回帝国議会における齋藤隆夫(1870~1949)代議士の質問・演説の再現。 1936(昭和11)年5月7日、衆議院本会議で行われ、軍部の政治介入を鋭く弾劾したことから俗に「粛軍演説」と言われる。 時の陸軍大臣・寺内寿一に対する質問をとおして、直前の二・二六事件、その遠因とする五・一五事件に見られる青年軍人の介入への批判や、これに迎合する政治家への批判を行なった。 1時間半近くの長大の熱弁となり、当時の大新聞にも取り上げられたが、本書の編集子は立憲政治の白眉として演説の速記全文を印刷・頒布したもの。定価20銭。

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